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 〈vol.3〉竹内茂彌先生 (富山大学名誉教授 放送大学富山学習センター客員教授)
                                   「取材日2005.01.14」                     

今回は、前回に引き続き竹内茂彌先生にインタビューしてきました。
「環境先進国 −ドイツのごみ事情編−」です。先生よろしくお願いします!

― 竹内茂彌先生のプロフィール − 
【経歴】 昭和40年8月富山大学教育学部助手となり、講師、助教授を経て、昭和60年4月教授。専門は「環境と高分子」で、自然環境化での微生物により分解するグリーンプラスチックに関する研究、グリーンケミストリーの推進、環境先進国の環境保全施策などについての調査を行っている。平成16年4月から富山大学名誉教授、放送大学富山学習センター客員教授。
【著書】 ひろがる高分子の世界」、「環境と科学 ―グリーンケミストリー入門―」、「グリーンプラスチック最新技術」など

 

 ドイツの環境に興味を持たれたきっかけは??

カズ:竹内先生がドイツの環境に興味を持たれたきっかけは何ですか?

竹内先生(以下先生):私は26年前に当時の西ドイツのマインツ大学に1年間留学していたことがあります。その当時の西ドイツは、特に環境に関して進んでいるとは思いませんでした。
 例えば、私が住んでいた客員教授宿舎では、玄関先に大きな金属製の容器があり、その中に紙でも瓶でも全て放り込んでいました。週に1回ぐらいでしょうか、ごみ収集車が来て運んでいました。廃棄物は焼却せず、埋め立てられていたようです。
 その後、シュバルツバルトの森林の酸性雨による被害、ライン川の水質汚濁など環境問題がますます深刻になっていたのですが、緑の党や市民団体などの環境保全活動により今では環境先進国と言われるようになりました。それを一度この目で見てみたいと思うようになったからです。
 それで、全国大学生協事業連合会の理事をしていた時に、生協が企画している「海外エコツアー」に参加し、ドイツとデンマークに行ってきました。平成13年の3月です。ドイツへはその後も数回行っています。


 ドイツのごみの仕組みは??

カズ:ドイツのごみ収集、リサイクルの仕組みはどのようになっているのですか?

先生:@ごみの収集の仕組み
ドイツ・リサイクルマーク ドイツでは、缶(アルミ、スチール)、ガラスびん、紙、プラスチックなどの容器包装については、製品のメーカーがDSD社(関係事業者および業界団体などの共同出資で設立した会社)と委託契約を交わし、契約を交わしたメーカーは、製品にグリューネ・プンクトというマークを付けることが認められています。
 このマークは、DSD社が回収してリサイクルする製品ですよと一目でわかるマークで、生活者はなるべくマークの付いた製品を買うことになります。
 なぜかというと、マークの付いた製品はDSD社が無料で回収しますが、同種の製品でもマークの付いていない製品は、行政が有料で収集するためお金がかかるそうです。
ドイツのゴミ事情 日本のようにごみ袋1枚を有料化しても大した金額ではありませんが、ドイツでは「ごみ料金」が高額なので生活者はお金のかかるごみの量を減らすためにマークが付いた製品を買うようになるのです。
 一方、企業はなるべくリサイクルしにくい材料は使用しないように工夫をすることになります。それは、リサイクルしにくい材料ほどDSD社に支払うマーク代が高くなっているからです。
 生活者も企業もごみの排出量を減らす方が「得する」ようなシステムになっているわけです。
 黄色い袋は、マークの付いた製品を入れ、DSD社が無料で収集する。
 黒色のボックスは、行政が有料で回収する(重量に応じて高くなる。)

ドイツのリユースAリユースびんの普及
 ガラスびんには、洗って繰り返し使う「リユースびん」と一回きりの「ワンウエイびん」がありますが、ドイツでは一時、ワンウエイびんが増えた時期がありました。
 そこで、リユースびんの利用を増やすため、リユースびんの利用率が72%を切った時は、ワンウエイびんや缶入りの飲料にもデポジット制(販売時に容器代を上乗せし、返却時に返却する方法)を適用すると法律で定めたのです。
 ところが、2002年12月にはリユース率が50.2%まで下がったため、大手ビール会社やスーパーチェーンなどの反対運動にもかかわらず、連邦政府の環境大臣(緑の党)は翌2003年1月からワンウェイ容器(缶、ペットボトル、ガラス)のデポジット制を実施しました。その後リユース率は上昇してきているようです。
 また、コーラ、ジュースなどのびんもリユースしやすいように(日本のビールびんのように)形がメーカー間で統一されたりしていますね。

ドイツのリユース02B買い物
 買い物の際、日本のようにレジ袋は無料ではなく有料です。だからほとんどの人は買い物かごか買い物袋を持って買い物に行きます。実際に町を歩くと主婦だけでなくあらゆる年齢層の人が買い物袋を持っているのを見かけます。
 またドイツでは飲料用自動販売機はほとんど見られず、学生数約2万人のフライブルク大学に2台だけある飲料用自動販売機も「マイカップ制」で、カップがない場合はプラスチック製のカップで出てきて「デポジット制」になっています。(当時のカップ代は4DM≒日本円で40円)。回収したカップは洗ってリユースされることから、ごみは全く発生しません。
 日本ではリユースカップは食品衛生法で認められないと思いますが、昨年度規制緩和されて富山県内では初の「マイカップ制」が飲料用自動販売機が富山大学生協に導入されました(前号参照)。マイカップ・デポジット制で、専用カップは、使用後に右側の回収機に入れるとお金が戻ってくる。

 自然エネルギーの利用??

カズ:ドイツは自然エネルギーの利用も進んでいるそうですね?

先生:風力発電や太陽光発電の設置が進んでおり、いろんな施設でソーラーパネルが設置されているのを見かけました。風力発電は、数年で元が取れるそうです。これは、電力会社に自然エネルギーの買い取りを義務付けているとともに、行政が設備の設置に補助金を出しているからです。
 環境大臣が脱原発を掲げる緑の党ということもありますね。

 日本の取り組みについて

カズ:日本の環境に対する取り組みについてどう思いますか?

先生:容器包装リサイクル法など、日本では法律はしっかりしていますがシステムがうまく機能していないと思います。
 これは前回でも話しましたが、うまくいかないのはモラルに頼っている部分が多いからです。生活者がごみを出すと損をするシステムにしないと駄目ですね。企業もリサイクルしにくい材料を使用すると損をするというシステムにしないと駄目なのではないでしょうかね。 
 また、日本では中心市街地の空洞化が進んでいますが、フライブルグでは平日の昼間でも町は多くの人々で賑わっていましたね。これは、市街地にマイカーが少なく人々はゆっくりと買い物が楽しめるからなんですよ。マイカーが少ないのは、市街地の駐車場が少なく駐車料金を高くしてマイカーを乗り入れにくくしているからです。一方で安い料金で路面電車が利用出来るようになっているのです。別にドイツ人が環境意識が高いということだけではなく、マイカーを利用するよりも路面電車を利用した方が「得をするシシステム」になっているわけです。 ただ路面電車はこれで経営が成り立っているかというとそうではなく、行政が税金から補助金を出しているのです。環境のことも考えて税金を有効に使用している姿勢が伺われます。
 こうした取り組みを見てくると、日本はお金の使い方が間違っているのではないかと思いますね。排出されたごみの処理とか山や田畑をつぶして道路を整備することに税金を投入するのが良いのか、ごみの排出量の削減とか公共交通機関を利用しやすくする方法にお金をかけた方が良いのか、まず「地球環境の保全」を第一に考えて施策を立てるべきではないでしょうか。
 自然エネルギーのことにしても同じです。コストがかかるということで、いまだに原発の方に多額のお金をかけていますが、私達の後に産まれてくる世代のことも視野に入れて、「今、何を大切にすべきか」を考え、選択を誤らないようにしなくてはなりませんね!

カズ:竹内先生今日はありがとうございました!!

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